第11回 第2部「ジャポニスム2018の企画概要」講演会

津川雅彦さんに続いて、「ジャポニスム2018」の具体的な企画内容を説明したのは安藤裕康さん。2016年5月、安倍晋三首相からの実施の申し出にフランスのフランソワ・オランド大統領が快諾。その後、ジャポニスム2018総合推進会議が発足し、企画内容の検討や展示スペースの確保など、活発な準備作業が両国間で行なわれています。

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2018年6月からの約9ヶ月間
あらゆる面から日本文化に光を当てる

現在、「ジャポニスム2018」の開催に向けて、さまざまな企画が立ち上がっています。まだ未確定な部分があるものの、フランス国内のさまざまな美術館や劇場で、日本を代表する古今のアーティストを紹介する企画が予定されています。

「まず、ジャポニスム2018のコンセプトを体現するような象徴的な展覧会を、ラ・セーヌ・ミュージカルで開催します。ここでは舞台公演など多様な企画を行いたいと考えています」

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また、伊藤若冲展の開催が決定しているほか、国宝級の仏像数体を出展する展示や明治展、琳派展、その他デジタルアート作品の展示や建築展、演劇パフォーマンス、映画特集など、さまざまな日本文化を紹介。2018年6月から2019年2月までの約9ヶ月間、フランスで、そのほかあらゆる面から日本文化にスポットライトが当たることになります。

 

文化の交流を通して
継続的な相互理解を

スライドを次々と映し出しながら、予定されているさまざまな企画を説明した安藤さん。これらの取り組みを進める中で、いくつかの課題も見えてきたそうです。

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「フランスは日本文化との親和性が高い国ですが、そのフランスでさえ、真の理解にはまだまだ至っていないと痛感しています。たとえば、若冲や琳派でさえパリでは知名度がかなり低く、展示会場を探すのにも苦労しました。浮世絵なら展示してもいいと言うのですが、それはちょっと違いますよね。かつてのフランスの文化大臣は『日本には浮世絵以外にも優れた美術があるのだから、フランス人に紹介するべきだ』と言っています。この状況を今こそ変えるべきだと思っています」

また、文化交流の基本は双方向性にあるということも実感した、と安藤さん。日本文化を一方的に紹介するだけでは不十分、このプロジェクトを両国が協力をしてやることが相互理解につながります。その点、フランス側は協力的で民間の支援も熱心なのだそうです。

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「最後に、ジャポニスム2018を一回限りの“お祭り”にしないことがもっとも重要だと思っています。継続性をもたせ、ネットワークを構築していくこと。展示会場探しに苦労した企画があった一方、アーティスト同士、プロデューサー同士がいい関係を構築できた企画は、扱うテーマの知名度に関係なくスムーズに進みました。2018年から2020年、それ以降も、個々のつながりを継続して強固なものにしていくことが、未来につながるのだと思います」

  • 津川 雅彦

    1940年1月2日、京都府出身。5才で阪東妻三郎主演の『狐の呉れた赤ん坊』(1945)に映画初出演。1956年『狂った果実』で津川雅彦として正式デビュー。『マノン』(1981)でブルーリボン助演男優賞を初受賞、『マルサの女』(1987)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞受賞するなど、数々の伊丹十三作品で強烈な存在感を示した。その後、『別れぬ理由』(1987)で毎日映画コンクール主演男優賞受賞、『プライド 運命の瞬間』(1998)で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど日本映画界を牽引する俳優として活躍。近年の映画出演作に『一枚のハガキ』(2011)、『0.5ミリ』(2014)、『後妻業の女』(2016)など。テレビドラマ出演作に『大岡越前』(2013~)、『銀二貫』(2014)、『戦艦武蔵』(2016)などがある。また映画監督、マキノ雅彦として、『寝ずの番』(2006)、『次郎長三国志』(2008)、『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』(2009)がある。Photo : Nakajima Yosuke (smooth inc)

  • 安藤 裕康

    1944年生まれ。1970年に東京大学を卒業後、外務省に入省。外交官として米国、フィリピンや英国での勤務を経て、内閣総理大臣秘書官、在米国日本大使館公使(特命全権)、中東アフリカ局長、在ニューヨーク総領事(大使)、内閣官房副長官補、駐イタリア特命全権大使等を歴任。2011年10月より、国際交流基金理事長として、外国との文化交流に取り組んでいる。