第11回 第1部「リオ2016大会閉会式東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー初体験で思った… ピコ太郎に負けるな。トランプ大統領にも小池都知事にも負けるな。東京の発信力! とかなんとか。」講演会

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WhatよりもHowを大切に
わかりやすくシンプルに伝える

過去のオリンピックとパラリンピックでも開会式や閉会式以外の文化芸術活動は数多く催されてきました。しかし、何が人々の記憶に残っているかというと、ほとんど忘れ去られているのが現状です。そういう意味で、佐々木さんは次回の東京2020大会での文化芸術活動のあり方に「下手をすると自己満足に終わる可能性も否定できない」と警鐘を鳴らします。

「広告でもそうなのですが、あれもこれも言いたいとなると、結局何も伝わらないということがよくあるのです。ですから、WhatよりはHow、何を伝えるかよりもどう伝えるかということが重要です。今回の講演タイトルでも触れましたが、ピコ太郎さんの曲『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』は、ジャスティン・ビーバーという人気歌手がインスタグラムで紹介したことで世界的ヒットとなりました。それからトランプ大統領。賛否両論ありますが、とにかく毎回注目度がすごいですし、小池百合子都知事も、いろんなキーワードを駆使していて、弁舌さわやか、わかりやすくてキャッチー。中身の話、つまりWhatもさることながら、How、つまりやり方としてすごくうまいんです。オリンピック東京大会まであと3年ちょっとしかないという段階で、何をどう伝えるかは相当絞り込まないといけない。だいたい5つくらいに絞って、シンプルにしないと、結局何も残らないんじゃないかという気がします」

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キーワードは「愛されジャパン。」

そして佐々木さんが東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて提案するキーワードは「愛されジャパン。」。例として披露したのは、缶コーヒーBOSSのおなじみのCMで、高見盛さんと宇宙人ジョーンズが共演するバージョン。「この惑星には、愛されるという勝ち方もある」というナレーションが印象的です。

「高見盛は、とても愛された力士です。やっぱり愛されるというのは何か魅力があるということ。日本人は、人から感じがいいよねと思わせる何かを秘めている国民性だと思います。戦争や災害など、いろんな辛いことがあったけれど、そこからしぶとく立ち上がってきたのを世界の人は見ています。今、世界中がなんとなく荒々しくなっているときに、本当の意味のピースというのはどこにあるんだろうかということに、この頃は多くの人が興味を持つようになってきました。『PEACE」という言葉は、もちろん平和の祭典であるオリンピックにも当てはまりますし、苦しいときも助け合う仲の良さという日本人のキャラクターとかベースとなるものを表現していると思います。ニッポンのキャッチフレーズともいえる伝統文化や先端技術、アートをアピールするのも良いのですが、なによりも、『日本人』そのもののユニークさ、素晴らしい能力、センスを伝えられたら、それがいちばん良いのではと思ったりします。そういう意味で、オリンピックのメンバーも仲良くしないといけない(笑)。今、若い人を中心に、闘うより仲良くしながらいいものを生み出すという流れがあります。それは、広い意味での『愛されジャパン』を表していると思います」

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講演の結びに、「先日、私は還暦になりましたので3度目のハタチなんですが(笑)」と、1992年の伊勢丹の広告のキャッチコピー「四十歳は二度目のハタチ」を例に挙げて、「『年寄り』とは『年より若い人』」と解釈するべきだ、という提案が。

「長寿国ニッポンは今後、少子高齢化から逃れられません。だから、年寄りというより『年より若い人』が多い国になるといい。若い人や女性に任せろ、そのほうがいいのももちろんですが、年より若い人にもやらせろ、と(笑)。ドラマ『相棒』が人気ですが、60代の水谷豊さんに対して、その相棒はだいたい30代ですよね。こういう年齢の異なる組み合わせに注目しています。フラッグハンドオーバーセレモニーのメンバーも、私が60代で、あとは30代ばかり。そして男女比は女性が約半分。ずいぶん若々しいメンバーでした。これから2020年に向けて、日本の文化を発信力をもって広げていくには エネルギーのある若い人と、経験のある年輩者のハイブリッドというやり方が必要になってくる、そう考えています」

  • 佐々木 宏

    クリエーティブディレクター シンガタ/1954年九州熊本で生まれ、その後、東京から北海道釧路と幼少期は全国縦断の日々。ビートルズに熱狂。50メートル6秒台の自称俊足でスピードスケートにも夢中。中学時代に東京に戻るが、父親が急逝。ドラえもんと出会う。愛読書も座右の銘もドラえもんになる。苦学生となるが、奨学金により慶應義塾大学卒。TV局のディレクターを目指すが、不況のため募集ゼロ。 77年電通入社。新聞雑誌局6年を経て、28才の時クリエーティブ局へ。コピーライター(ヘボ)となる。上司や、スタッフに恵まれ、これ以上ない幸福幸運な 電通生活26年を卒業し、48才にして、「シンガタ」設立。今年15年目。趣味は広告とiPhone。仕事とLINEと時々酒とカラオケの日々。ひょんなことから、リオの閉会式ハンドオーバーを担当。安倍マリオなど仕掛ける。
    ●SoftBank 白戸家「犬のお父さん」シリーズ、ブラッドピット&キャメロンディアス、SMAPキャンペーンなどの全プロジェクト。
    ●SUNTORY BOSS矢沢永吉から、宇宙人ジョーンズまで24年担当。3.11直後の「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」を著名人70組で「歌のリレー」  モルツ球団 ウイスキーKONISHIKI・ リザーブ友の会
    ● TOYOTA 「 ReBORN 」木村拓哉とビートたけしの東北シリーズ、ドラえもん、 ピンククラウン ECO-PROJECT,など33年担当。
    ●JR東海 「 そうだ、京都 行こう。」を最初の10年担当。 ●資生堂 UNO- FOGBAR 新発売キャンペーン 
    ●ANA 「ニューヨークへ、行こう。」「LIVE/中国/ANA」「沖縄キャンペーン」など12年担当。
    ●FUJIFILM 樹木希林お店シリーズ、「お正月を写そう」「ASTALIFT」
    ●リオオリンピックパラリンピック閉会式ハンドオーバー東京セレモニーを企画演出プロデュース。
    ◎ 広告賞は、ADCグランプリ、ACCグランプリ、TCCグランプリ、カンヌ国際広告フェスティバル金賞、1993年・1998年クリエーター・オブ・ザ・イヤーなど受賞。 ◎ ADC東京アートディレクターズクラブ会員、TCC東京コピーライターズクラブ副会長、ACC審査委員長。