第11回 第1部「リオ2016大会閉会式東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー初体験で思った… ピコ太郎に負けるな。トランプ大統領にも小池都知事にも負けるな。東京の発信力! とかなんとか。」講演会

2017年2月14日(火)に行なわれた「カルチャー・ヴィジョン・ミーティング」で、リオ2016大会閉会式東京2020フラッグハンドオーバーセレモニーのクリエイティブスーパーバイザーを務めた佐々木宏さんによる講演が開催されました。テーマは、フラッグハンドオーバーセレモニーの振り返りと、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた文化芸術活動の課題について。世界中の人々に東京大会への期待感をもたらした8分間のパフォーマンスができるまでの道のりと、その貴重な体験を経て佐々木さん自身が感じた率直な思いを語りました。

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東京2020大会の“予告編”
フラッグハンドオーバーセレモニー

ソフトバンクの白戸家「犬のお父さん」、サントリーのBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車の「ReBORN」などの数々の話題のコマーシャルを手掛けてきた佐々木宏さん。講演では最初に、長年広告業界に身を置く佐々木さんが今回のフラッグハンドオーバーに関わることになったきっかけを語りました。

「今回のフラッグハンドオーバーセレモニーを担当させていただくことにつながる直接的なきっかけは、2013年にさかのぼります。渋谷駅前の再開発が決まったという新聞報道を見たとき、あの渋谷が副都心のような高層ビル街になるのを阻止したいと思い、いい意味での渋谷の猥雑さを守りながら、屋外ムービングアドなどでブロードウェイの演目や賑やかな広告が展開されるニューヨークのタイムズスクエアのような街を創っていくべきというイメージ映像を勝手につくったんです。この映像は縁があって著名な建築家の方や企業の偉い方にもご覧いただいたり、当時の都知事をはじめ、さまざまな関係者の方に見ていただくことができて、共感してくださる方が多くいらっしゃいました。それで、その延長線上のような形ですが、また調子に乗って(笑)、これもふだんからなじみの酒場でのワンパターンネタとして周囲をうんざりさせていたものですが、『オリンピックってさ〜』という極めて自己主張の強いアイデア集を映像にしてみたわけです。お恥ずかしいレベルのものですが」

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講演では、その映像を大スクリーンで鑑賞。「オリンピックの開会式や閉会式をアスリート中心のイベントにすべきではないか」「日本はアニメーションや漫画が世界的に有名だから、キャラクターたちを参加させたい」など、後のフラッグハンドオーバーセレモニーにもつながる、さまざまな斬新なアイデアの種が盛り込まれた、佐々木さんのオリンピック観がはっきりと視覚化されたものでした。

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「私は、紅白歌合戦とアカデミー賞と箱根駅伝とオリンピックが三度の飯より好きなタイプでして(笑)。渋谷をこうしろとか、オリンピックはこうすべき、という、本当に何様かと自分でも思いますが、その極めて誇大妄想的で自分勝手な映像が、巡り巡って……リオのフラッグハンドオーバーセレモニーのご依頼という形で、戻ってきたのですね。いやぁ、わからないものです。当時は競技場やエンブレムの問題など、オリンピック関連でトラブルが続いていた時期。失礼ながら、火中の栗拾いかなと瞬間的に思いましたし、イベント経験もほぼなくて、映画監督や演出家でもない私ですから。野次を飛ばす側ならともかく。

周囲は『やめておけ』と猛反対でしたね。でも、組織委員会の方は、2020年東京大会の予告編ということで世界にアピールしていくわけですし、また8分間という短い尺ということもあり、CMをやっている人間に任せてもいいんじゃないかと思っていただいたようです」

WhatよりもHowを大切に わかりやすくシンプルに伝える

  • 佐々木 宏

    クリエーティブディレクター シンガタ/1954年九州熊本で生まれ、その後、東京から北海道釧路と幼少期は全国縦断の日々。ビートルズに熱狂。50メートル6秒台の自称俊足でスピードスケートにも夢中。中学時代に東京に戻るが、父親が急逝。ドラえもんと出会う。愛読書も座右の銘もドラえもんになる。苦学生となるが、奨学金により慶應義塾大学卒。TV局のディレクターを目指すが、不況のため募集ゼロ。 77年電通入社。新聞雑誌局6年を経て、28才の時クリエーティブ局へ。コピーライター(ヘボ)となる。上司や、スタッフに恵まれ、これ以上ない幸福幸運な 電通生活26年を卒業し、48才にして、「シンガタ」設立。今年15年目。趣味は広告とiPhone。仕事とLINEと時々酒とカラオケの日々。ひょんなことから、リオの閉会式ハンドオーバーを担当。安倍マリオなど仕掛ける。
    ●SoftBank 白戸家「犬のお父さん」シリーズ、ブラッドピット&キャメロンディアス、SMAPキャンペーンなどの全プロジェクト。
    ●SUNTORY BOSS矢沢永吉から、宇宙人ジョーンズまで24年担当。3.11直後の「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」を著名人70組で「歌のリレー」  モルツ球団 ウイスキーKONISHIKI・ リザーブ友の会
    ● TOYOTA 「 ReBORN 」木村拓哉とビートたけしの東北シリーズ、ドラえもん、 ピンククラウン ECO-PROJECT,など33年担当。
    ●JR東海 「 そうだ、京都 行こう。」を最初の10年担当。 ●資生堂 UNO- FOGBAR 新発売キャンペーン 
    ●ANA 「ニューヨークへ、行こう。」「LIVE/中国/ANA」「沖縄キャンペーン」など12年担当。
    ●FUJIFILM 樹木希林お店シリーズ、「お正月を写そう」「ASTALIFT」
    ●リオオリンピックパラリンピック閉会式ハンドオーバー東京セレモニーを企画演出プロデュース。
    ◎ 広告賞は、ADCグランプリ、ACCグランプリ、TCCグランプリ、カンヌ国際広告フェスティバル金賞、1993年・1998年クリエーター・オブ・ザ・イヤーなど受賞。 ◎ ADC東京アートディレクターズクラブ会員、TCC東京コピーライターズクラブ副会長、ACC審査委員長。